発表会直前、「もっと練習させなきゃ」が逆効果になる理由
本番直前、「もっと弾かせなきゃ」と思っていませんか
発表会やコンクールが近づくと、ご家庭で「あと何回弾ける?」「毎日もっと長く練習しなさい」
と声かけが増えることは珍しくありません。焦る気持ちはよくわかります。
しかし、ピアノ講師の立場から見ると、直前の時期に練習量だけを増やすことは、
かえって本番のパフォーマンスを下げるリスクがあります。
特に小学生低学年や、普段から真面目に取り組んでいる子どもほど、
量を増やした分だけ疲労とプレッシャーが蓄積しやすい傾向があります。
大切なのは「どれだけ弾いたか」ではなく、「本番でいかにベストな状態で鍵盤に向かえるか」です。
練習量を増やすと起こりやすい「逆効果」
直前の詰め込み練習で見られる主な弊害は、次の3点です。
- 指と腕の疲労:筋肉が回復しないまま本番を迎え、音のコントロールが利かなくなる
- 精神的な余裕の消失:「まだ完璧じゃない」「もっと弾かなきゃ」という焦りが、本番での硬直を招く
- 「なんとなく弾ける」状態の定着:丁寧な確認作業を飛ばし、ミスを含んだままの流れで固まってしまう
レッスンでは、直前になって突然ミスが増えたり、テンポが不安定になったりする原因の多くが、この「直前のやりすぎ」にあると感じます。子ども本人は「頑張った」という充実感を持っていても、身体と神経は悲鳴を上げているケースが少なくありません。
代わりに大切にしたい「いつものリズム」と「通し稽古」
では、直前の1〜2週間をどう過ごせばよいのか。講師としておすすめするのは、いつもの生活リズムを崩さないことです。
練習時間を普段より大幅に延ばすのではなく、以下のポイントで質を高めます。
- 1日1回の「本番モード」通し稽古:着替えや靴、椅子の高さ確認まで含め、ノンストップで1回だけ通す
- 気になる箇所だけの「部分確認」:通した中で不安だった小節だけを、ゆっくり丁寧に見直す(5〜10分程度)
- 楽譜を見ない「メンタル練習」:椅子に座って目を閉じ、頭の中で最初から最後まで音楽を鳴らす
「通し稽古」は本番の緊張感を疑似体験する貴重な機会です。
ここでミスをしても「ここが危ない」と気づき、残りの日数でピンポイントに対策できます。
毎日何度も弾くより、1回の集中した通し稽古の方が、本番力を育てます。
子どものタイプに合わせた直前の過ごし方
年齢や性格によって、最適な直前の過ごし方は異なります。
- 完璧主義・不安になりやすいタイプ:「もう十分できるよ」「今のままで素敵だよ」と声をかけ、練習時間をあえて短めに区切る
- マイペース・緊張感が足りないタイプ:「本番シュミレーションしようか」とゲーム感覚で通し稽古を提案し、メリハリをつける
- 幼児・低学年:練習そのものを「おさらい会」「家族コンサート」などイベント化し、楽しさを優先する
どのタイプにも共通して言えるのは、
親御さんが「もっと」と言わなくても、子ども自身が「これで大丈夫」と思える状態を作ることです。
ご家庭での声かけは「頑張れ」よりも、「今の演奏、すごく良かったね」「あのフレーズ、きれいに響いてたよ」
と、具体的な「できた」を伝える言葉にシフトしてみてください。
Photo by Geert Pieters on Unsplash

