「できない」を「まだ」に変える、レッスンノートの使い方
レッスンノート、ただの「連絡帳」になっていませんか?
レッスンバッグから出てくるノート。中身を見ると、私が書いた宿題の曲名と、保護者の方が書いた「練習しました」のスタンプやサインだけ、というケースは少なくありません。もちろん、忙しい毎日の中でサインをするだけでも大変なことだと承知しています。でも、このノートは「先生と親御さんの交換日記」ではなく、お子さん自身が「自分の練習を客観視する道具」として使えたら、もっと面白くなります。
「弾けた/弾けなかった」だけで終わらせない
小学生くらいになると、自分でノートに書き込めるようになります。「今日の練習、どうだった?」と聞くと、「ふつう」「できた」の一言で終わることが多いですよね。そこでおすすめなのが、「どこが、どう変わったか」を一言書く習慣です。
例えば、「3小節目、左手だけゆっくりなら弾けた」「最後のペダル、変えるタイミングがまだあやしい」など、事実だけを短くメモさせます。「上手くいった」「失敗した」という評価ではなく、「今の自分の状態」を言語化するのです。これ、大人の生徒さんにも通用する、かなり強力なトレーニングになります。
「できない」の正体は、たいてい「まだ」
レッスンで「ここ、まだ難しいね」と言ったとき、お子さんが「無理」「できない」と首を横に振る瞬間があります。でも、ノートに「右手の16分音符、指が回らない」と書いてあれば、話は変わります。「じゃあ、リズム練習してみようか」「指使い見直そうか」と、具体的な解決策の選択肢が見えてくるからです。
「できない」は感情ですが、「指が回らない」は事実です。事実は変えられます。この「感情」と「事実」を分けるクセがつくと、ピアノ以外の場面——テスト勉強や部活、友達関係でも——「なんでダメなんだろう」と立ち止まれるようになります。これが、音楽を通して育てたい「自分に向き合う力」の正体の一つです。
親御さんができる、最高の「声かけ」
では、家庭ではノートをどう覗けばいいのか。赤ペンで直す必要はありません。ただ、書かれた言葉に反応してあげてください。
- 「ここ、先週よりスムーズになってるね」
- 「この『難しい』って書いてあるところ、先生に聞いてみたら?」
- 「自分で『直った』って書けてるじゃん、すごい」
評価や指導ではなく、「気づき」を共有するスタンスでいるだけで、お子さんは「自分の練習を見てくれている」「自分の言葉が意味を持つ」と感じられます。それ以上の動機付けは、ありません。
小さな「気づき」の積み重ねが、発表会の自信になる
発表会直前になって「緊張する」「失敗したらどうしよう」と不安になる生徒さんは多いです。でも、普段からノートに「今日ここ直った」「このフレーズ、歌えるようになった」という小さな「できた」の記録が積み上がっていれば、それは立派なお守りになります。「ここまで積み上げてきたんだから、大丈夫」——その根拠は、先生の言葉でも親の言葉でもなく、自分自身が記録した事実だからです。
KUMAピアノ教室では、レッスンノートを「宿題帳」ではなく、自分と対話するための「思考のメモ帳」として位置づけています。最初は「疲れた」「眠い」でも構いません。書くこと自体が、自分を客観視する第一歩になるからです。来週のレッスン、ノートの中身が少し変わっているのを楽しみにしています。
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